ぶらり京都(2020年10月12日~10月13日)

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2011年4月23日24日の気仙沼

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    気仙沼市唐桑町にの甥一家が東日本大震災で津波の被害に遭遇。お見舞いに駆け付けた時の撮影。

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2020年9月28日 (月)

『星あかり』の世界

泉鏡花の作品は何冊か読んだことがあり、この『星あかり』も青空文庫での再読、その感想である。

『星あかり』をどう評価するかというのは難しい。

精神医学では「幻覚」を感覚の諸様態に即して分類、その中に「幻覚/自己像幻視」というのがあるが、この作品では幻視像の出現する時の精神状態、幻視像の性状など、夢幻的表現によって描いており、いわゆるリァリティの尺度からのみでは捉えられない難しさがある。

精神心理や深層心理といった学問の側面から、この作品を捉えるのも良いが、素人の私が安易に詮索すべきものではなく、ただ無限の世界に浸り切っているに過ぎない。

『星あかり』における現実にはあり得ない恐怖と不安は、主人公がもとより、「身体(からだ)も精神も共にいたく疲れていたからで。」と言っているように、何らかの不安症状を心の内に抱えた異常な精神状態であったと見ることができる。

同居人である医学生の制止にもかかわらず、深夜、起居先である西鎌倉、乱橋の妙長寺を抜け出した主人公が、墓原の散策に出て、外に締め出されてしまう。
やむを得ずそのまま墓原をさまよい歩くが、途中で悪夢のような異常な現象に遭遇。
以下の文章では、『星あかり』における異常な現象内容・結末に触れてみる。

「廂(ひさし)も、屋根も、居酒屋の軒にかかった杉の葉も、百姓やの土間に据えてある粉挽臼も、みな目を以って、じろじろねめるようで」とあるが、これは彼の内にある外界からの疎外感による恐怖からくる。
その恐怖から何とか逃れたと思ったら、次は犬に怯える。
「一つでない、二つでもない。三頭(つ)も四頭(つ)も一斉に吠え立てる」この犬のために、前方に進むこともできないし、かといって引き返せば、先刻の臼やら杉の葉やら、廂にも屋根にも睨まれる。どちらもできない。
「静(じっ)と立っていると、天窓(あたま)がふらふら、おしつけられるような、ひしひしと重いものでおされるような、切ない、堪(たま)らない気がして、もはや!横に倒れようかと思った。」

このような星あかりの下で、不安や恐怖がさらにエスカレートして、自然の力にまで及んでいく。
「一秒に砂一粒(いちりゅう)、幾億万年の後には、この大陸を浸し尽くそうとする処の水で、いまも、後も、咄嗟のさきも、正に然なすべく働いているのであるが、自分はあまり大陸の一端が浪のために喰い欠かれることの疾(はや)いのを、心細く感ずるばかりであった。」
海の侵食に対する恐怖である。

これらの不安症状が蓄積されて、主人公はこの海岸に打ち寄せている大浪が、彼を襲いかかるという幻覚に陥る。

夢かうつつか、判別しがたい状況の中で、死に物狂いで寺の門に引き返した主人公は、夢中で蚊帳にまつわりついた。

「医学生は肌脱ぎて、うつむけに寝て、踏み返した夜具の上へ、両足を投げかけて眠っている。 ト枕を並べ、仰向けになり、胸の上に片手を力なく、一人すやすやと寝ているのを一目見ると、それは自分であったので、天窓から氷を浴びたように筋がしまった。」

主人公が遭遇した星あかりの下での恐怖や、夜明けの海での恐怖。そうした体験の後、死にそうな思いで寺に帰ってきた彼自身の姿は、もはや蚊帳にはまとわっていなかった。
すでに蚊帳の中にいた・・・自己像幻視といえる。

この種の幻視像の出現が、神経症的な異常からくるものであるということは最後の部分、「・・・人はこういうことから気が違うのであろう。」といっていることからも明確である。

主人公にとっては、見たくもない世界だった。
そういう内(彼の内に潜む無意識)の世界をながめた目の強さが、一転して外界に戻る・・・すべてが融合して、無限の味を添えている。

理解できないことなのかもしれないが、それならそれで良い。
無理に理解しようとすれば、結局人間のただの道を歩くことでしかない。

人生は理解できないことが多い、と同様に理解できないことも必要とするだろう。
たとえば、満天に輝く星が美しいのは、星が理解できないからただただ美しいし、その一かけらが青田に弱々しく光るのも、星の一かけらが理解できないから、そこに光るのを見ることができる・・・そう思うだけでいい。

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