2011年4月23日24日の気仙沼

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    気仙沼市唐桑町にの甥一家が東日本大震災で津波の被害に遭遇。お見舞いに駆け付けた時の撮影。

乱読

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2020年3月10日 (火)

沈丁花の香りが馥郁と立ち込める

弥生も半ば近く、春の花のエッセンスが強く香って、木々の梢に寄ってくる小鳥たちの姿も、なんとなく生き生きとして見える。


今朝の散歩は、春の息吹きに曇ってる。
沈丁花の甘い香りが、曇った空に吸われていくようだ。

Chndnghu

沈丁花といえば、宮本百合子の『沈丁花』に、こんな件がある。

「いらっしゃいますか」
 千鶴子の声であった。出るといきなり、
「あなた丁字の花御存じ?」
と云った。
「丁字? 沈丁とは違うの」
「見て下さい、これ今お友達から送って下すったの。余りいい香(におい)で嬉しくなったから一寸あなたにも香わせて上げようと思って」
 千鶴子は手にもっている封筒から、四つに畳んだ手紙を出し、土間に立ったまま、
「ほら、いい香でしょう」
と、はる子の前へ折り目を拡げた。女らしいペン字の上に細かい更紗飾りを撒いたように濃い小豆色の沈丁の花が押されていた。強い香が鼻翼を擽(くすぐ)った。春らしい気持の香であった。
「私もこの花は好きよ」
「いいでしょう?」
 千鶴子は前垂れをかけたまま亢奮して飛び出して来た、そのつづきの調子で、
「一寸この人字がうまいでしょう?」
など、断(き)れ断(ぎ)れに喋った。
「お上りなさいな」
「いいえ、また。これさえ香わせて上げればいいの、左様なら」

宮本百合子『沈丁花』
青空文庫で30分くらいで読める。

 

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