2011年4月23日24日の気仙沼

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    気仙沼市唐桑町にの甥一家が東日本大震災で津波の被害に遭遇。お見舞いに駆け付けた時の撮影。

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2020年3月15日 (日)

空中反転作用

2020年2月20日 (木)の本ブログ「あまりにも理不尽だ」で取り上げた芭蕉の句
鶯の笠落したる椿かな」は、庭先でしきりに囀るが、美しい花笠でも落としたように 椿の花がポトリと散り落ちた様子を詠っている。

 
犬の散歩途中に、赤い花を付けた椿の木に出くわす。
今は、その椿の木の下に盛んに赤い花が落ちているが、よく見ると、花首ごとうつ向きに落ち始めるのだが、地面に落ち着いた時には仰向けになっている不思議に遭遇する。

Tubaki_20200315082501


「落ちざまに虻(あぶ)を伏せたる椿哉」は、夏目漱石の句である。

虻がツバキの蜜を吸っている最中に花が落ちたので、その中に閉じ込められたという句意だ。

その漱石の弟子である物理学者であり俳人、随筆家でもある寺田寅彦は、『思い出草』の中で次のように書いている。

「今から三十余年の昔自分の高等学校学生時代に熊本から帰省の途次門司の宿屋である友人と一晩寝ないで語り明かしたときにこの句についてだいぶいろいろ論じ合ったことを記憶している。

どんな事を論じたかは覚えていない。ところがこの二三年前、偶然な機会から椿の花が落ちるときにたとえそれが落ち始める時にはうつ向きに落ち始めても空中で回転して仰向きになろうとするような傾向があるらしいことに気がついて、多少これについて観察しまた実験をした結果、やはり実際にそういう傾向のあることを確かめることができた。

それで木が高いほどうつ向きに落ちた花よりも仰向きに落ちた花の数の比率が大きいという結果になるのである。しかし低い木だとうつ向きに枝を離れた花は空中で回転する間がないのでそのままにうつ向きに落ちつくのが通例である。

この空中反転作用は花冠の特有な形態による空気の抵抗のはたらき方、花の重心の位置、花の慣性能率等によって決定されることはもちろんである。それでもし虻が花の蕊しんの上にしがみついてそのままに落下すると、虫のために全体の重心がいくらか移動しその結果はいくらかでも上記の反転作用を減ずるようになるであろうと想像される。すなわち虻を伏せやすくなるのである。
こんなことは右の句の鑑賞にはたいした関係はないことであろうが、自分はこういう瑣末物理学的の考察をすることによってこの句の表現する自然現象の現実性が強められ、その印象が濃厚になり、従ってその詩の美しさが高まるような気がするのである。」

寅彦の考察のやうに、椿はうつ向きに落ち始めても、空中で空気の抵抗や花弁や芯の具合で上向きに落ちるのが普通ということだろう。

Tubaki1

 

 

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