2011年4月23日24日の気仙沼

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    気仙沼市唐桑町にの甥一家が東日本大震災で津波の被害に遭遇。お見舞いに駆け付けた時の撮影。

乱読

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2019年12月 6日 (金)

神保町の古書店街

ここ数年は足を運んでいないが、船橋の弟妹のところに出掛けた時に時間に余裕があれば神保町の古書店街を歩く。

津田沼から総武線で水道橋駅に出て、徒歩で神保町の古書店街を一軒一軒覗いて回るのが好きだ。

――文学系、古典系、歴史系、思想・宗教系、洋書系、美術系、自然科学系・・・と、それぞれの店が特徴を持っている。

いつの時もそうだが、目当ての本があるわけでもない。
あらかじめ下調べをして行くわけでもなく、その場で目にしたものの中から興味を注がれたものを数冊購入する程度のこと。


「雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ」の宮沢賢治は、この神保町を図書館代わりに故郷花巻に情報を送ったという。
写真で見る賢治は、疲れた中折れ帽をかむり、よれよれのコートを着て、泥だらけの靴でうつむいていて、土ばかりを見ている印象だが、貧しさから東北農民を開放するために、渦高く積まれた本の中から情報をあさったのだろう。

――なるほど、神保町は世界一の古書店街と言われるだけある。
膨大な資料がある。

詩を書く人なら知っていると思うが、『ユリイカ 詩と批評』がある。
数年前、その「1972.08 (vol.4-09)宮沢賢治未発表資料」を購入した。

●未発表詩作品「薤露青」(かいろせい)、天沢退二郎校注解説
これは、下書として鉛筆で書いたものを消しゴムで消した状態であったが、全集の編集作業で判読され、今では詩集「春と修羅第二集」に収められている。
下に「薤露青」全文を引用しておく。

●未発表童話作品「グスコーブドリの伝記 下書稿」入沢康夫校注解説

賢治の生前に雑誌に発表された作品の下書きであり、昭和20年8月10日、空襲を受けた花巻市にあって、賢治の生家も類焼という火難をくぐりぬけた、関連未発表資料、図版が載っている。
「薤露青」の薤露とは、らっきょうの葉っぱの上にたまった露のことで、人の命のはかなさのメタファーであり、亡くなった妹への挽歌の意が込められている。

一六六 薤露青 
                    一九二四、七、一七、

みをつくしの列をなつかしくうかべ
薤露青の聖らかな空明のなかを
たえずさびしく湧き鳴りながら
よもすがら南十字へながれる水よ
岸のまっくろなくるみばやしのなかでは
いま膨大なわかちがたい夜の呼吸から
銀の分子が析出される
  ……みをつくしの影はうつくしく水にうつり
    プリオシンコーストに反射して崩れてくる波は
    ときどきかすかな燐光をなげる……
橋板や空がいきなりいままた明るくなるのは
この旱天のどこからかくるいなびかりらしい
水よわたくしの胸いっぱいの
やり場所のないかなしさを
はるかなマヂェランの星雲へとゞけてくれ
そこには赤いいさり火がゆらぎ
蝎がうす雲の上を這ふ
  ……たえず企画したえずかなしみ
    たえず窮乏をつゞけながら
    どこまでもながれて行くもの……
この星の夜の大河の欄干はもう朽ちた
わたくしはまた西のわづかな薄明の残りや
うすい血紅瑪瑙をのぞみ
しづかな鱗の呼吸をきく
  ……なつかしい夢のみをつくし……

声のいゝ製糸場の工女たちが
わたくしをあざけるやうに歌って行けば
そのなかにはわたくしの亡くなった妹の声が
たしかに二つも入ってゐる
  ……あの力いっぱいに
    細い弱いのどからうたふ女の声だ……
杉ばやしの上がいままた明るくなるのは
そこから月が出ようとしてゐるので
鳥はしきりにさわいでゐる
  ……みをつくしらは夢の兵隊……
南からまた電光がひらめけば
さかなはアセチレンの匂をはく
水は銀河の投影のやうに地平線までながれ
灰いろはがねのそらの環
  ……あゝ いとしくおもふものが
    そのまゝどこへ行ってしまったかわからないことが
    なんといふいゝことだらう……
かなしさは空明から降り
黒い鳥の鋭く過ぎるころ
秋の鮎のさびの模様が
そらに白く数条わたる

地面を見つめ、土を思い、なお且つ東京で街頭布教をしていたとういう賢治は、独身のままで37歳の生を全うし、文壇から消えていった。
「薤露青」を読めば読むほどに、彼への憐憫の情が胸奥にひろがる。

Den30

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