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2007年5月22日 (火)

『龍の棲む家』のなかの漢詩

玄侑宗久『龍の棲む家』のなかで、痴呆の父親を介護する息子が、壁にかけられた一枚の色紙を眺め感慨にふける箇所がある。元気なころの父親が、良寛の好んだ漢詩を書いたものだ。

君看双眼色(きみみよ そうがんのいろ)
不語似無憂(かたらざれば うれいなきににたり)

精神活動が低下し、家族の記憶が薄らいでいく。回復の兆候が一向に現れない父親であっても、その双眼の奥に深い憂いがあるのだ、と・・・。改めて漢詩の意味するところを理解し、現状を受け留めようとしたに違いない。私はこの漢詩を全く知らなかったので、出典を知るためにNET検索をしてみた。

色紙に書かれた「君看双眼色 不語似無憂」は、江戸時代の臨済宗の僧であった白隠禅師の句だが、元はといえば、鎌倉後期の臨済宗の僧・大燈国師の「千峯雨霽露光冷(せんぽうあめはれて ろこうすさまじ)」という句を受けて作られた連句のようなものだということだ。
そうなると白隠禅師の句の解釈も違ってくる。その辺をりを指摘して、興味深い解釈をしているサイトがあった。
上記サイトでは「双眼」を宇宙全体の眼として見ており、自然界を自然のままに受け入れようとする大らかさが感じられる。
その一方、良寛は大燈国師の句から切り離して白隠の句を好んでいたわけだ。白隠の句だけから受ける印象は、心の奥にある憂いを外に出さない人間像を語っているように思えるし、『龍の棲む家』のなかでの息子の受け留め方でよいのだろう。

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