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2006年9月 2日 (土)

秋の匂い

(朝の散歩)
時間が早かったり遅かったり、コースだって舗装された歩道だったり、コンクリートの割れ目から草が覆い茂っている川の堤防だったり、その日の私の気分でコロコロと代わる散歩に犬も戸惑っているかもしれない。
それでも、私の引くリードに従い尻尾をフリフリ歩くのだから、私と一緒の散歩が楽しいのだろう。
早朝、久しぶりに川の堤防を散歩した。鳴く虫を追って草むらに顔を突っ込む犬にリードを引かれるままにしていたら、犬の体も私の靴も朝露にびっしょりと濡れてしまった。おまけに踏み込んだ振動で草の実がぼろぼろと散って、犬の体にくっついてくる。毎朝、ハァハァと舌を出してリードを引かれるままにひたすら歩いていた8月のことを思うと、急に涼しくなった9月の朝である。

(ナップタイム)
Img_6939 午後、昼食後のお昼ね。寝付くまでの読書が私の睡眠薬だが、手元には目新しいものがない。今日は図書館に新刊書が並ぶ日だが午前中に行きそびれたのだ。自分の本棚の中から『恋文』(アントニア・フレイザー編/吉原幸子訳/三笠書房)を取り出して再読。既に絶版になっている本だが、古今東西の偉人達のラブレターを集めたもの。かなり昔に購入したもので表紙カバーさえ擦り切れて捨ててしまった。
手紙にしたためた彼らの燃える気持ちに、意外な側面を見ることが出来て楽しい本だ。
日々散語の7/4分の日記にカフカが女性に手紙を出しまくっては婚約し破棄を重ねたと書いたが、彼の優柔不断さ、決断力のなさは、『恋文』のなかに紹介されているフェリス(フェリーツェ・バウアー)に宛てた手紙にもそれが伺われる。
長文なので、ほんの一部分だけを引き出してみるとこうだ。

 フェリス様!実は折り入ってお願いがあるのです。それはかなり馬鹿げて聞こえるであろう頼み事です。
もし僕がこんな手紙をもらう立場だったら、やはり馬鹿馬鹿しいと思うでしょう。それはまた、どんなに優しい人でも時には受けなければならないような、まさに最大の試練でもあります。
つまり、こういうことなのです。
 僕への手紙を週一回だけに、それも日曜日に着くようにして欲しいのです――というのも、毎日手紙を貰うことに耐えられないからです。実際、耐えきれないのです。例えば、その中の一通に返事を書いたとしますね。それから、一見冷静にベッドに這い入る。でも心臓の鼓動は体じゅうに響いて、貴女のことしか考えられないのです。僕はもう貴女のものです。実際のところ、ほかにどう言ったらいいのかわかりませんし、これではまだまだ言い尽くせない気持ちです。
だがしかし、僕が貴女のものだからこそ、貴女が今何を着ているかということまで知りたいとは思わないのですよ。そこまで知っては心が千々に乱れてしまって、まともに生活することも出来なくなります。貴女が僕を好いていてくれることを知りたくないというのも、その同じ理由からです。もしもそれを知ったら、どうして僕のような愚か者が、オフィスや家でこれまで通りきちんと坐ってなどいられましょう?(以下略)
1912年11月11日

そう書いておいて、その舌の根の乾かぬうちの1912年11月20日の手紙では、「返事が遅い」と彼女を攻め立てている。

 いとしい人よ、貴女にこうも苦しめられなければならないようなことを、僕は何かしでかしたのでしょうか?今日もまた一通も来ません。一回目の配達でも二回目の配達でも。ああ、僕をどこまで責め苛むのです!貴女の手で書かれたただの一言が僕を幸せにできるというのに!僕にもう飽きたのですね。そう考えるよりほか説明がつきません。(以下略)
1912年11月20日

こうした矛盾も、激しく燃えたときの心の乱れを正直に表しているものだと思う。恋愛は時に矛盾を伴うものだ。

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