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2006年9月19日 (火)

与勇輝人形芸術の世界

Img_6996 松坂屋本店美術館で開催されている「与勇輝 人形芸術の世界」に行ってきた。
今年2月にパリ・バカラ美術館で初の個展を開いた、その帰国記念展。パリで発表された映画監督小津安二郎へのオマージュ作品15点を中心に合計54作品、感動を呼ぶ人形120体を一同に鑑賞することができた。それぞれに個性があふれる人形たち。人間の形態をこれほどまでに息吹かせることが出来るのか、と驚きの連続で見入った。
創作人形も素材によって雰囲気が変わるが、作品は全て木綿布を使って制作されており、作品一つ一つにおける布の選択が、私にとっては心憎いほどに懐かしい。多くの作品が優しくノスタルジックで、私が子供だった頃の日常を見るようだ。 制作風景を解説した映像Img_6977_5を観たが、作品に添えられている小物、例えば櫛、かんざし、履物をはじめ、桶や火鉢といったものまで全て自身の手で制作されている。それらの小物を人形と一括りの小物というよりも、「布を用いた塑像」として位置づけ、小物制作に費やす時間も人形本体の制作にかけると同じくらいの多くの時間を掛けているということだ。それだけにディティールが美しい。印象に残ったのは、やはり小津映画の風景だ。『長屋紳士録』の中から荒物屋の「おたねさん」。『東京物語』の中から老夫婦が熱海でくつろぐシーン。『秋刀魚の味』の「嫁ぐ日」等々。かつて確かにあった小市民の暮らしぶりや、情緒が伝わってきて、なんだか古きよき時代にタイムスリップした気がした。
小津映画が、親子、夫婦、隣人との繋がりを大事にした日常を淡々と描いた。1937年(昭和12年)生まれの与さんは、その映画を観て育った。影響されている部分も多いのだろう、「戦後の混沌とした世の中で貧しく明るく逞しく生きる人々の姿が私の原風景です。」と言う。
映画と人形、創作の表現方法は違っても、そこに流れる風景に心やすまる日常の家庭がある。
小津映画が監督の死後フランスやイギリスで評価が高まり、世界を代表する映画監督の一人になっていることを思えば、今後、与勇輝さんも世界を代表する人形作家として期待できる。いや、パリ・バカラ美術館での個展が大賞賛されたようだから、既にヨーロッパでは根を下ろしているわけだ。

外国人で小津映画が分かる人は、皆インテリばかりと大島監督が言っていたのを、今ふと思い出した。与さんの創作人形展がパリで大賞賛されたのも、フランスにインテリが多いからかも(笑)

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コメント

>益樹さん

素敵な言葉、感動するコメントをありがとうございます。
与勇輝さんの人形の世界は本当に素晴らしいです。どの人形も、どの人形も、その体の中に魂の輝きのようなものがあります。

益樹さん、本当にそうです。
私が引き出しにしまっておいた、忘れていたもの、それがいかに大事なものであったか、それを与勇輝さんが探し出して教えてくれたような気がしています。

投稿: hituji | 2006年9月21日 (木) 02時27分

この方の創る人形は、本当に表情豊かで、じっと長く見ていても全く飽きないですね。その上、心の中からなにか懐かしい、ほのぼのしたものが湧いてくるような感じがします。私が幼い頃、心に蓄え、今はどこかの引き出しにしまって忘れてしまったものをよみがえらせてくれるようです。たとえ人に騙されたとしても、最後の最後には、人が人を信じていた時代の良さが感じられます。

投稿: 益樹 | 2006年9月20日 (水) 22時09分

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